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「別れ際って肝心だよ?お互い住む世界が違うんだから一緒には暮らせないでしょ」
納得してくれると思ったのに、一匹がイケメンの所に移動し何やら耳打ちしてる……ように見えた。
「あのすみません、この者達がどうしてもついて行きたいと言い出しまして」
「困ります!大蛇と人が仲良く暮らせない世界で住んでますんで」
ハッキリと言い切るとまた大蛇がヒソヒソと発言してるように見える。
「山金犬も姿を変えて一緒にいらっしゃるとか。私もそうやって暮らしたいと……」
図体がデカい割に、意外と注意深く観察する目を持ちチクリを入れる姑息さもある。
田村さんを見たが、当然ながら困った顔をしているし、イケメンは大蛇を集め何やら相談をしてるようだ。
「今日は帰ります。仕事の依頼は後日……その時に今後についても話をしましょう」
田村さんが声をかけてくれたが、話が纏まったのかイケメンがこちらを向き一匹の大蛇を連れてきた。
「飼える様に犬に変化させますので、この子を傍に置いていただけないでしょうか」
薄いブルーの瞳で見られると、全部を見透かされてしまいそうで視線を外したくなる。
大蛇の住む世界と言っても、トップクラスが美形なのに驚いてしまう。
イナリの世界のトップは物腰は紳士だが、悪魔か死神と言われても納得するくらい見た目が本気で怖い。
「我が家の王子とのバランスを考えて小型犬でお願いします」
瑠里の意見を聞くと、イケメンが手の平にビー玉のような綺麗な玉を出し指で弾いた。
眩しい光の後、大蛇の姿は消えており代わりに足元にミックス犬が尻尾を振っている。
そのまま連れて帰りそうな勢いの瑠里を止め、神話を読んでいた私は、胸騒ぎがして美形の兄ちゃんに向かい声を荒げた。
「待って!大蛇は……娘を食らった罪人でウチの田舎では神楽の演目にもなってる!そんな怪物と一緒に生活なんて出来ない」
見た目が人に近いほど頭が働き、悪行が巧妙化するのも仕事で覚えた事だ。
美形の兄ちゃんはギクッとするどころか、クスッと笑って自己紹介を始めたが、疑いの眼差しを向け黙っていた。
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