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萌葱刺繍
軽く会話をし一度神楽見に来てください等の社交辞令を交わした後、裏門を潜りパネル部屋に戻った。
シャワーを浴びて受付に戻ると『土産は消毒中』と言われコーヒーを飲んで待つ事にした。
実際のところ苺大福は貧乏一家には邪道なスイーツで持ち帰っても恐らく『普通の大福がいい、藤井屋がいい!』と因縁をつけられそうな気がしていた。
「木村さん…それ良かったら持って帰って下さい、貧乏人の口には合わないと思われるんで」
「えっ、白犬地方のお土産なんて手に入らないから…じゃあ社長達と試食させてもらうね。でも貰った百合は感想聞かれるから一つ食べてみたらいいよ」
葉に近い部分だけが淡いピンクで後は真っ白な苺が上に乗っている。
ウチのドラム缶なら『まだ熟してないって』と言いそうなルックスだが、桃色がかった団子に堂々と座っている。
小豆大好きな私ですら出来れば別々に味わいたい一品だが、全部人にあげたとも言いづらい。
まずは苺の部分だけ食べてみると予想以上に甘くてほんのりと酸味があり、青臭さなんて全くなく美味しかった。
「白苺は甘酸っぱいからこちらの世界でも『初恋の味』なんて言われてるのよ。どんな子に貰ったのかな――?!」
オバサンが好きなゴシップネタに変えたいようだが、残念ながらその地方で有名な土産を仕えてる人が買って来ただけの話だ。
次に大福部分も一緒に頬張ってみると初めての食感で目を見開いた。
「美味しい!好きかも……」
甘いだけじゃなくて酸味も混ざってみずみずしいし、後味もスッキリしている。
「でしょ?持って帰らなくていいの?」
好きだけどあの二人というか、特にドラム缶は昔ながらの和菓子が好きだし、恐らく口に合わないだろうと想像される。
「はい、やはりウチの家族は王道なほうが好みだと思います」
土産を木村さんに預け部屋から出ようとすると、瑠里が来る時間帯に顔出してと声を掛けられ、表情が変わる。
「いやヘルプじゃなくて、無色チームに話があるからって社長が」
「……分かりました」
帰ったら休みなのでいいが、瑠里は話が終わると学校に向かうので気分が悪くなるような内容は止めて欲しい。
職場に出るから少しトレーニングして帰ろうと思い、まずは家でゆっくり仮眠しておく事にした。
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