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「新作のスプリングブーケじゃ。百合さんのはレモンと食用の花びらが入って見た目も可愛いし『お花を食べてるみたぁい』と人気のシリーズだ」
手を動かしながら器用に商品を説明するとはさすが社長だけの事はある。
「悟のはかぼちゃのジャムで甘すぎずおかずパンに変身も出来る。スライスアーモンドやナッツをトッピングして食べてもいい」
パンのお供ジャムにも力を入れてるのも抜け目がないし発想に女子力も感じられる。
「その他に麹を使ったカステラや饅頭もそろい組で充実したライナップじゃろ?」
社長は自慢話を混ぜつつ、サラッとフクロウの世界の説明を挟んできた。
瑠里の留学校は農耕を盛んとし、実際に食物を育てたり珍しい品種の扱い方も教えられていて人気らしい。
イザリ屋は表の仕事の参考になるので、短期留学が開催される時は誰かが特待生で参加している。
ただ、ここは治安がいいとは言えず夜メインの行動となるため犯罪に巻き込まれやすい危険なエリアのようだ。
「食感がレタスで味がジャガイモとか面白いのもあっての、近所の祭りにでも行く感覚でいいぞ?学校内を出なければ安全じゃしワシも一緒だからの」
そういえばウチの夜祭には瑠里と社長がペアだったが、あの役を私がやるのは御免だった。
「そろそろ、うちの子寝かしつけないと…では皆さんご機嫌よう」
後ずさりしてみたが、イナリ達は社長が置いた餌を凝視して一歩も動いていない。
「それも新作みたいよ、キムに頼んどいたから。興味あるみたいだね~、食べさせてあげたいよね」
白旗を挙げ餌のトレイを前に出すと、王子達は嬉しそうにガツガツと食べ始めた。
トレーニングだけで帰る予定だったし嫌な予感もするが、瑠里がどんなところに通ってるのか若干興味もあり複雑な心境だ。
「じゃあ設定は農業一家が新種を見に来たテイで。彼女役が良ければ希望を……」
「調子に乗るなよじじい、余計な事に巻き込んで又酷い目に合わせたらタダじゃおかないからな」
王子達はお留守番させようと思ったが、どこまでもついて行くと言わんばかりに足元から離れないので、社長の許可を貰ってパネル部屋に向かった。
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