萌葱刺繍

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ホットサンドと飲み物、イナリ達にはドッグフードが用意され木の下で食べていると、他の休憩の人も隣に座って食べていた。 その表情はとてもイキイキとしていて、私達みたく休憩はすぐオフにするイヤラしさは微塵もない。 「すみません、姉さんにまで手伝っていただいて……隊長には普段から新しいことも教わってお世話になりっぱなしなんです」 「いえ、あのご迷惑をおかけしてないなら良かったです」 意外な言葉に加え、妹がクラスに馴染んでるのにも驚きで、人見知りを先に卒業し成長してる姿に逞しいとさえ思えた。 初めのクラスの雰囲気はいいものとは言えなかったらしいが、実習が始まってからは植え方や土の状態を妹が指摘すると、全員で協力してやり直しを開始したようだ。 黙々と作業をこなせるし、質問されても小さい頃から手伝ってる私達には『祖父母』という絶大な信頼がおけるマニュアルがある。 妹はかかってきなさいと言わんばかりに得意げに答えていただろうと想像され、微妙に恥ずかしくなり肩をすくめた。 学校生活の様子を教えてくれた隣の男性は、かなり瑠里と親しいのかと思い名前を聞いてみると、その答えに穴があったら入りたい気分になった。 「あるんですけど……隊長からは『田中』って呼ばれてます」 『――適当に呼びすぎやろがっ!』 忍者服は着ているがフクロウの世界の人らしく目は山吹色に薄っすら光ってるし、特徴的な細マッチョ体型だ。 背も高そうだし適度に威圧感もあるのでグループ分けするとウチのリーダーと同じような気もする。 他の忍者達もこんな感じで偽名で呼び『ゆるく』接しているのかもしれない。 それが忍者探偵Xのキャラ時の瑠里も特徴でもある。 「田中さんすみません、やっぱ妹ご迷惑かけてるみたいで……」 「いえ全然そんな事ないです、じゃあ屋台に戻りますんで」 軽やかに立ち去って行く背中を見つめながら『申し訳ありません』と目を瞑って仏様を拝むように手を合わせた。 満足するまで食べたので戻ろうとしたが、瑠里が近づいて来て、客足が落ち着いたからゆっくりしてとキセロのリードを預かってくれた。
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