言い訳の女子会

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「私は塵里(じんり)、この世界のトップの息子です。父は隠居するので来月には継承します。確かに大蛇は娘の血や肉が好物……というのは昔の話。そんな暮らしをしていては国が滅びるだけです」 『そんな時代遅れな生活してませーん!この世界の金持ちで地位も力もあるボンボンなんで』 私の中で勝手に変換され、何処か気に入らないのは僻みも入っているからだ。 「大蛇があなた達に執着するのは興味深いですが、恐れ多くて鬼を食べたりしませんよ」 「鬼じゃない!近いけど般若の間違いだよ」 「やかましい!似たりよったりやろが!」 疑わしいところはあるが、私より瑠里の方がずっと見る目があるのは知っている。 その妹が何も言わないのは、認めたくないが信用していい証だ。 「月影瑠里、隣の般若が姉の百合、そっちの強面は田村さんです。大蛇は大切に一緒に暮らすつもりですが、社長の許可が下りない場合は諦めるしかないです」 「はい、仰せの通りに。あとこれは細やかですがお礼の品ですのでお持ち帰りくだ……」 「いりません!お守り類マジでいりませんから!」 本気で断ってるのに『遠慮は禁物です』な素振りで渡されてしまうのはお約束というよりテンドンなんだろうか。 瑠里の足元にいる犬はペットショップで顔を合わせたトイプードルとチワワのミックス犬によく似ている。 「それいくらだったっけ?」 「確か三十万位したよね」 姿形は可愛いがウチには不釣り合いな贅沢犬だし、イナリと上手く付き合えるかも気にかかる。 既に王子がいるのに、新参者が入れるほど甘くない予感がする。 「イナリがいるんだよ?争いになるよ、俺の縄張り荒らすんじゃねーって」 「そっか……やっぱり無理かな」 「クゥゥ…ン、キュゥン」 寂しそうな鳴き声が瑠里の足元から聞こえた。 原型犬でも何でもないけど『置いてかないで』という意思表示はハッキリと分かる。 「気持ちは分かるけど、責任持てないなら止めた方がいい。私達には仕事もあるし、ドラム缶に二匹任せるのはキツイと思う」 「大丈夫です。その子は仕事でも役に立つでしょうし、慕っているといっても同士みたいな感じですのでご家族様ともきっと上手くいきます」 「とりあえず戻りましょうか」 田村さんが苦笑いをして、行きとは違ういつもの扉からパネル部屋に戻った。
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