言い訳の女子会

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木村さんがゲージを持って入ると中にはイナリがいて、開けると私の膝の上に駆け寄ってきた。 「大丈夫かな……イナリ警戒心強いし。大蛇と仲良く出来るだろうか」 「っていうかね、ここで動物のパートナーは珍しくないけど、向こうから志願されるのは姉妹が初だし本当イレギュラーばっかで飽きんわ」 笑いながら部屋を去っていく丸い背中を見ると、ウチのドラム缶そっくりで、正月太りしてるのではと余計な心配をしてしまう。 カレーパンを頬張ってる瑠里だったが、イナリを見て冷静さが蘇ったのか反省モードに入り出した。 「やっぱ王子が一番。魔が差したんだよ…なんか通じるもんがあってさぁ。金色に光るイカした目、チワワ並みに小さいのに殺すぞ的なオーラもあって大蛇咬みちぎられるかも」 「だろっ!?甘いんだよ瑠里。ウチの王子半端ないって知ってるでしょ!見た目はキュートでも中身は猛獣なんだよ」 ドラム缶とも仲良くしてるし、イケるかもと思っていたのかもしれない。 ウチの家族と仲良くしてるのも奇跡なくらい獰猛と言われてる山金犬と、大蛇が一つ屋根の下で生活なんて無理だ。 「明日……大蛇の所へ見送りに行くわ」 検査には時間がかかるので、今日は大蛇犬を預けて帰り、瑠里にも考える時間を与えるともっと正気になる筈だ。 貧乏一家に猛獣二匹は荷が重いし、これ以上変な事や物に巻き込まれてる場合ではない。 そもそも話が逸れたが、私は引ったくりに合いお礼の為にグミを持参で狐の世界に行っただけだ。 瑠里達は同じ世界で、黒術を使う狐人間の偵察のヘルプで入っていた。 大蛇の『お』の字も出てくる流れではない。 女狐は朧達に確保されめでたし・めでたしな話をわざわざややこしくしなくてもいい。 帰り道でも瑠里は浮かない表情だったが、順を追って説明をし朧から預かった盆栽の本を渡して、大蛇の事が薄れるよう努力をした。 「おかえりぃ~イナリ!」 娘より王子を抱きしめて出迎えする母に溜め息をつき、ここだけは平和な時間が流れてる気がする。 自分の部屋に入ると雑誌のページを捲り絵の通りにポーズをしてみる。 太極拳みたいな感じでぎこちなく真似しながら、こんなんで本当に大丈夫かと心配しつつノルマを終えてベッドに入った。
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