桜の季節のクラスメイト

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とはいえウチの王子もプライドと警戒心はあるので、よだれを垂らしてたとしても自らは行こうとしない。 次男は山金犬と仲良くなりたいみたいで隣からジッと観察しているが、イナリはプイッと横を向き友好関係を築くつもりはなさそうだ。 田村さんと木村さんがコーヒーを持ってくると、みんなで和菓子とケーキを食べながら今後の相談が始まった。 空蝉屋の講義はそれぞれ週一で行われているが、一般は簡単な事しかやらないので、私達もこっそり特待生の授業に紛れ込めばと提案された。 「いや今回はあくまで任務だからの、百合さん達にはいずれ特待生として、短期留学とかに参加してもらいたいと思っておる」 後半の声を聞こえない位のボリュームにして私達に睨まれないよう先手を取るキツネ。 「まぁどっちの世界に現れるか分かりませんが、ウチに被害が出ないようにしっかりと体制整えて下さいね」 歩兎さんが社長に念押しをしていたが、一般の授業の最中に急に敵が出てきた場合、どう対処すればいいのか聞いてない。 双棒も持ち込まないので、大蛇を操って暴れだしても止めようがないし、ヘルプは瞬時に来てくれるとは限らない。 「大丈夫、百合達には指一本触れさせねー。ちゃんと助っ人の用意してるから俺に任せてみなよ」 「気持ち悪いんだよ!いつも騙されてるから信用は全く出来ない」 考えが全く読めないキツネに初めての短期留学、弁当のおかずの心配と敵が現れた場合の不安。 いくつも心配要素が重なるが、老舗の和菓子はそれ上回る美味しさでつい個数が増え、逆に不安ナシと勘違いされる始末だった。 それからは休みが四日程あるが、その内一日はジャガイモを植える畑仕事になるのは分かっていた。 留学の報告も含めお彼岸参りに行くのも悪くないとプラスで考える事にした。 自宅に戻ると母が天気を見ながら行く日を迷っていたが、私達は買って来た物をチェックしていた。 「ちょっと、なにこれ!頼んでない」 「美味しそうでしょ?」 安い水筒はリクエストしたが、お菓子数種類が余分に増えている。 言い訳としては新作だった事と日勤の人達に休憩時に配るのもいいと言われたが、その前に食べ終わってしまうに決まっていた。
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