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「なんかヤバそうですけど、大丈夫かな」
「少々の化け物ならやっつけるから安心して。それにちょっと気にならない?」
子供並みの好奇心と恐れを知らない格好良さ…蘭さんが男性だったらきっとモテモテの勇者に相違ない。
「きゃああーーっ!」
悲鳴が聞こえさっさと逃げたかったが、蘭さん達は走り出し、右腕もアイリスさんに拘束されている。
イナリはワクワクしてるのか、ジャンプしながら姉さん達に踏まれないよう器用に駆けていた。
勇者が四人に村人一人。
出来ればそっとしておいてほしいし、仕事で来ていないので下手に襲われても困る。
悲鳴が聞こえた場所にはもう誰もおらず、周辺の空の色が黒くなってるのでみんなで上を向いた。
「なんだあれ?竜じゃなくて大蛇かな」
頭上で泳いでいたのは長さが三十メートルはありそうな大蛇だった。
「デカッ!あんなん神楽でしか見たことない!」
アイリスさんの腕を引っ張って逃げようと頑張ったがビクともしない。
「何匹いるか分からん、ウジャウジャしてる」
「降りて来ないと、さすがにあそこまでは飛べないからね」
蘭さんは上にジャンプする気満々で、ダリさんも上着を脱ぎ勇ましい限りだ。
アイリスさんは私を後ろ手にかばい大蛇を見つめている。
『こいつらどこ出身の勇者!?逃げる気ゼロじゃん!女子の相手じゃないやろが!』
冷静なのは私だけでイナリも『かかって来んかい』の顔をしている。
「みんな――、落ち着いてください、敵は大量にいます!ここはひとまず……」
「よし!バラバラになろう私がおびき寄せる!」
蘭さんが走り出すと、大蛇が反応を見せ上から追尾していた。
「危ないって言っとるやろが――!ゴリ姉でも相手悪いって……話聞けや――!」
アイリスさんの背中からサッと前に出ると、猛ダッシュして蘭さんに追いつく。
犬螺眼を使えるので、いくらゴリラが早くてもイナリも余裕で隣を走っていた。
大蛇は導かれるように私達の頭上にいたが、襲って来るまではこちらから攻撃する気はない。
「百合凄い!めちゃ足早いんだ」
ドゴォォ――ンと大きな音が響き、蘭さんの感嘆の声をかき消したので慌てて地面に身を伏せる。
爆発音ではなかったが、何となく嫌な予感がしていた。
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