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「ねぇ!誰か大蛇に向かって何か投げてる!」
蘭さんがそう叫び立ち上がったがジッとその場を離れない。
砂埃の向こうからは人影と何かが見える。
アイリスさんの手を借り起こされたが、イナリが走って行くのを見て、予感が的中したと下を向いた。
瑠里が柏餅関連を使い、何かをしたのは分かっている。
勇者達をどう誤魔化せばいいか分からないし、何があったんだと頭の中で考えてみるが、本来こういう役は妹に任せているので苦手だ。
「あっ、こんにちわ」
散歩ついでのような軽い挨拶が聞こえ、思わずみんな返事をする。
泥だらけで片手をあげる瑠里の後ろには、大蛇がゾロゾロと蜷局を巻いていた。
「いい天気ですね女子会日和で。そんな顔しなくても大丈夫ですよ、これはペットで……」
「嘘つくな!そんなん飼ってるなんて初耳だわ!」
真っ先にツッこみ、本気で大蛇を飼うつもりかと焦って言葉を遮ってしまう。
瑠里が職場で大蛇というあだ名で呼ばれているのは知っているし、執念深いという意味で名付けられたのも分かっている。
でも例え本物の蛇系と気が合ったとしても、そんなのをペットにされたらたまらない。
「百合の知り合い?」
「はい……妹です」
「マジで――!」
大蛇の事よりそれに驚かれたのは不思議だが、この場をどう収めるのかと責めるような視線を妹に送り続けた。
「こいつらを操っていたのは狐女でさ。売られた猿女が確かめる為に使ってみたら、術の封印が解けて大蛇が現れたんだけど…」
説明がややこしいが結果悪いのは狐女のようで、瑠里に近づいて小声で質問をぶつける。
狐女はどうなったかと、その大蛇をどうするつもりなのかと。
「狐は確保されてどっかに連れて行かれた。こいつら……意外と可愛いよ?たぶん操られて迷惑してたんだと思う」
情に絆されてる場合かとため息をつくと、ダリさんが割って入ってくれた。
「喧嘩はやめて。赤術使えば私みたいに普段は住処で自由にさせてあげれるよ」
彼女が手を正面に翳すと、赤い光の後に少し炎が出て煙が空に向かってユラユラと上がりだした。
パッと映像が現れたかと思うと大きな竜が姿を出した。
「うわぁ……カッコいい!」
さっき言ってたドラゴンのペットはこれだと呑気に見とれていたのも束の間だった。
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