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蘭さんも蓮さんもまだ戻って来ないが周辺の様子を確認しようと思いつき、塵里には屋台を覗いて来ると嘘をつきその場を離れた。
美味しそうな匂いがしているが、それ以上に嫌なオーラというか気配がする方向があり、導かれるように足を進めた。
先程もだが何か起こりそうな場所と言えば暗がりと相場は決まっているのか、明かりがどんどん減っていき桜の木もなく森の入り口が見えた。
「これ以上は危険だな……犬螺眼使ってもいいけど武器もないし」
引き返そうと向きを変えると『ザザッ』と奥から葉が揺れる音が聞こえ、何かが猛スピードでこちらに向かっている気配がした。
「マズい、どうしよう!」
周りにイザリ屋はいないし、考えてる時間もなければ武器も持ってない。
おまけに気配は複数感じてるので、思い当たるのはキセロ同様、操られた大蛇だと予想される。
ここから外に出しては神楽もメチャクチャになるし被害者も多数出てしまうが、双棒を持ったところで五匹以上どうやって食い止めればいいのかも分からなかった。
「瑠里ーー!アンタどんな方法で止めたの――!」
木々を縫ってこちらに向かってくる何かに、出来る限り抵抗をしようと仁王立ちになると、リュックを隣に投げて目を閉じた。
『来た』と目を開けたが、思った以上に大きく迫力のある大蛇が口を開けたのが見え、すぐに後悔が押し寄せる。
「ムリムリムリ――!やっぱ怖すぎる――っ!」
恐怖で身体が竦むと、手前五センチで壁があるように大蛇は止まり、稲膜を張れたのかと勘違いした位だった。
何が起こったか分からず呆然としてると、後ろから塵里がゆっくりと歩いて来た。
「いい子達……誰がそんな目に合わせたんだろうね」
「そっか!モノホンの大蛇のトップが居たんだったぁ」
後はこの人に任せておけばいいが、操ってる本人を探し出さないとキリがない事に気づいた。
「すみません後頼みます!ちょっと野暮用があるんで」
真珠さんの所に突っ走ろうとしたが、塵里に止められ転びそうになった。
「犯人は捕まりましたので、もう大丈夫です」
訳が分からず地面に座り込んだが、塵里は大蛇八匹を甕覗色の目と、ゆっくりとした手の動きで落ち着かせているように見えた。
身体の周りには同色の炎が浮かんでいて、執行の時の自分と似ている気がした。
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