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大蛇が静まると自分の世界に誘導するように、甕覗色の道しるべを出してから戻って来た。
「とりあえず片付いて良かったです、百合さんお疲れ様でした」
何もしてないしアタフタと一人でパ二くっていただけなのに、挨拶されてもピンとこない。
歩きながら塵里の説明を聞いてくうちに、この人達に一杯食わされたとボンヤリ状況が飲み込めてきた。
狐の仲間はどっちの世界に入るか分からなかったが、どうしても大蛇を悪用する奴が許せず塵里は猿、手下はフクロウの世界に短期留学で潜入した。
私達姉妹のオーラに絶対に犯人は近づくと確信があったらしい。
塵里は特待生だが一般のクラスに入った密告者からの連絡で、犯人が私に近づいたと察知し夜祭で行動させるように仕向けたらしい。
「……で、犯人は真珠さんだったんですか」
「ええ、その通りです」
出来れば別の人が良かったが話した事があるのは、クラスで紫紺か真珠さん、あとは招いてくれた蘭さんしかいない。
美人で優しい所もあったし色んな才能も持ち合わせてるのに、なんでそんな商売をしたのだろうか。
監獄に囚われてる立花絢人の師匠と同じく『欲』だとしたら本当に勿体ないし残念な気持ちになる。
ウチも貧しくて『生活を苦に犯罪に手を染めました』と言っても不思議に思われない暮らしぶりだったが家族での決め事はある。
『人様に迷惑の掛かる事はしない』というのは小さい頃からおじいちゃん達にも言われそこだけは守って生きてきた。
今では裏の始末屋稼業をしているので、迷惑をかけてないかの自信はないが、そこは狐面の社長達を信じるしかない。
「騙すような事をして申し訳なかったのですが、やはりショックですよね」
「いつもそんな感じなんで慣れてはきてますが、因みに密告者って誰だったんです?」
目をつけていたのは槿と真珠さんなので他は全くノーマークだったし、紫紺も怪しい気配はなかった。
とは言っても今回は感じ取る能力が低下してるのか、敵が隠すのが上手すぎたのか反省点が多く、誰かを当てる自信もない。
でも何となく『紫紺は何も関係なく純粋に神楽を勉強しに来た』と思いたいのは正直なところだ。
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