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神楽は夜通し行われるので次の演目までは自由時間となるが、紫紺が近づいてくると不思議そうに質問された。
「百合どうしたの?ポテトと石なんか持って……」
ハッとして石を捨てると『鬼が舞台から飛び出てきた用』と説明して案の定笑われた。
「そんな風に感じてくれたなら鬼役の人も本望だったと思う、確かに鬼気迫るものがあったし勉強になったから」
紫紺も興奮気味に話すと飲み物でも買いに行こうと誘ってくれ、塵里と三人で店に向かったが背後にいる亡霊の事をすっかり忘れていた。
歩兎さんは女子生徒達に捕まり助かったが、キャップを被った滋さんだけは後ろをついて来た。
イザリ屋とは他人のフリというルールを忘れているのかと言いたいが、堂々と話しかけてこないので滋さん的には守ってるようだがかなりウザい。
飲み物と気になる物を適当に買い、シートに残ってる人達の分も塵里が購入すると、女子に渡している隙を狙って紛れ込んだ。
蘭さんの隣にずっといましたみたいに自然を装い、神楽の見える位置をキープして、ジュースとお菓子を横に置いたら完璧だ。
女子の話し声は多少うるさいが死神達に囲まれてるよりはずっとマシだし、隣は蘭さんなので何かあれば勇者はきっと守ってくれる。
それに次の演目は母の田舎の神社でも見た事があるので、どう違うのか比較して楽しみたい。
夜も更けてきたので舞台近くの焚火にも薪が追加され、シートの見物客には毛布が配られた。
「そろそろ女子は寮に戻りなさい、睡眠時間は肌にも大切ですからね」
生徒の腕組みを外しながら歩兎さんが帰そうとすると『え―っやだぁ』と甘いトーンで駄々を捏ねていた。
寮まで送るからと皆を立ち上がらせるとハーレム男が消えて行き、急にスペースが広くなった。
「百合もそろそろ帰る?」
蘭さんも疲れが出たのか顔は眠そうで、酔葉の件で睡眠不足だったと想像はつく。
「次の演目だけ見たら戻りますので、場所の地図だけ下さい」
紙と部屋のキーを預かると毛布に包まろうとしたが、隣で人のお菓子を勝手に摘まみ、頭から毛布を被っている二人組が見え嫌な汗が出そうになった。
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