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「お前ら、ここでな……」
「こんばんわお嬢さん、いい神楽日和で何よりですのぅ。いい場所が見つかって良かった、野暮用でスタートが遅れたからの」
「爺ちゃん、このポテトおいひ――!もっと買って来ようよ」
狐二匹……いや、毛布から顔だけ出している社長と瑠里は、当たり前のように人のオヤツを平らげている。
おまけに全く足りないと言わんばかりに妹はその姿のままで買い足しに動いた。
なんでいるのか問い詰めたいが、隣のシートには紫紺がいるし、塵里は瑠里の存在に気付いているかもしれない。
ヘルプで来たのは滋さんだけでなく、冷やかし半分で狐二匹もついて来たのかと思うと腹立たしくなっていた。
「百合……こっち来る?」
急に変な毛布二人組が私の隣に来て、尚且つ当然のように居座っているので、紫紺は心配そうな顔で声を掛けてくれる。
「坊やこそこっちにおいでなされ、いい物やるぞ美味しい食パンあるからの」
「紫紺そっちで見物した方がいいよ、こっちは狐の鬼の残り香がするし縁起が良くない暗示が出てる!」
「ぷっ!また百合はおかしなこと言って」
遠ざけるつもりが紫紺は笑いながらこちらのシートに来て横に座ってしまい作戦は失敗に終わった。
滋さんよりウザい社長は紫紺をターゲットに決めたようで今から探りに入るに違いない。
瑠里も買い物から戻ってくると真ん中に戦利品を広げ『どうぞ』と勧めつつ、半笑いの目で紫紺の事を興味深く見ている。
「いただきます」
このシートは紫紺のだし、自分で確保したエリアなのに何故か狐二匹宅へ訪問した感じになっていた。
「兄さんイケメンだね爽やかだし、でもモテるから女泣かしてそうだね」
お前は何歳だというような可愛げのない質問を毛布一号がすると、二号も間髪入れず口を開く。
「ワシの予想では名前呼び捨てをサラッとする奴は遊び人(夜)と出とるが、どうなのそこんとこ」
「えっ?いやウチは田舎だから、毎日神楽の稽古ばかりですよ?」
「あ、そっち?自分の仕事に集中するあまり家庭を顧みないタイプか……ふぅ」
『ふぅじゃねーよ!勝手に自己採点して判断するな!』
イライラが増すこちらに引き替え、笑いながらお菓子を食べている紫紺はマイペースで、逆にヒヤヒヤしていた。
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