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「じゃあ私はどうです?いい子は地元のどの辺で見つかります?」
「お前さんは知らんよ、自分で勝手に探したら?ワシ男性には不親切って昔から変わってないから」
狐と歩兎さんが言い合いをしていたが希望の演目も見れたし、朝には講義があるので瑠里は社長に任せ蘭さんの地図を見ながら部屋に向かう事にした。
紫紺が送ると言ってくれたが『見逃したら勿体ない』と遠慮して断り目印を頼りに歩き出す。
寮は三つの大きな建物に分かれていたが『来客用』は一つ目の奥だと示されていたので、入ろうとすると気配を感じて振り向いた。
深夜でライトは少ししかないが、犬螺眼を持つ私には甕覗色の瞳がはっきりと見えお辞儀をすると静かに去って行くのが分かった。
塵里のさり気ない行動に改めて感心していると、心の声を代弁するような声が聞こえてくる。
「素敵ぃ~!紳士の最上級って感じかな、目がハートになっちゃう」
「桜舞うっさいよ……でも親切なのは確かだな」
「うわっ単純――!百合ってベタな優しさに弱いんだ、心配だな」
中から桜舞、隣の建物から樹さんが現れ空気を読まないコメントに恥ずかしさと苛立ちを同時に感じ無視して部屋に入った。
今までの生活の中で男性に送ってもらうなんて初めてだし、仕事ではなく自然に出来る塵里は紳士的だ。
凱に似てる部分もあって怖いけどドキドキするスリル……というか、なんとも言えない気持ちになる。
シャワーを浴びると目覚ましを二個セットし寝坊しないように頭の中を空にして眠る事にした。
翌朝、鳴る一時間前にが朝日が差し込んできて自然と目を開けていた。
顔を洗い着替えを済ませると朝食をどこで食べていいか分からなかったが、蘭さんを起こすのも申し訳ないのでリュックを背負い自分で探す事にした。
早朝の部活で走ってる人達やいい匂いを漂わす食堂も二つは空いていて、モーニングを食べたりパンだけ買って帰る人もいたが、旅行に来た気分でセットをガッツリ食べた。
教室近くの舞台は設置されたままだが、見物人はおらず宴は終了されたと見てとれる。
瑠里も社長に連れて帰ってもらいまだ夢の中だろうが、私は昨日でクラスメイト二人が居なくなり複雑な気持ちになっていた。
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