桜の季節のクラスメイト

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桜の季節のクラスメイト

意識を集中させどの力を使うか考えていると、急に目の周りが眩しくなって風が下から吹き上げる勢いに思わず腕で防御した。 風が落ち着くと力が湧いてくる気がして、手を少し広げてみる。 背後から温かい熱が伝わって来る頃にはキツネ二匹と大蛇は動きを止め、こちらを恐怖に満ちた目でガン見していた。 「お前ら……調子に乗りすぎやろが、外部の人に怪我させたらどうすんだコラ!お前も無暗に大蛇に戻るならもうウチでは飼わねーぞ」 「じょ、冗談だって!ちょっと狛をビビらかせようとしただけじゃーん。目を瓶覗色(かめのぞきいろ)にしちゃって何?火を八つニョロニョロさせてどしたの」 「そうだよっ、モノホンの大蛇がビビるくらい魔王にデコレートしなくてもいいでしょうよ、いくつの瞳を持つつもりっ!落ち着きなさいよ」 キツネ二匹は必死になだめに入り、大蛇もキセロの姿に戻っていたが、私に近づく者はおらずいつでも逃げれる距離を保っていた。 「百合様……喉乾いたじゃろ?コーヒー持って来るから、まず深呼吸して床に座ろう」 社長は田村さんに合図し、空蝉屋を避難させようとしたが、怖がるどころか興味津々な目で近づいてきた。 「凄い……この子桁外れだわ。なるほど、親父殿が『嫁に迎え入れたいっての分かる』」 「目の色と炎……ボディガードじゃない理由よく分かった。完全に執行役だ、護衛じゃ勿体ない」 「いいなぁ山金犬に加えて大蛇とも共存してるなんて……羨ましすぎるぅ」 興奮しながら三人がそれぞれ口を開くので、誰に注目していいのかも分からない。 「これ!ウチの大型新人にそれ以上寄るな、腕は見たし帰ったらどうじゃ」 「百合さん、和菓子の土産があるけど俺らも一緒にコーヒー飲んでいいよね?勿論粒あんだよ」 「あ、どーぞ・どーぞ」 イナリを膝の上に乗せ空蝉屋の兄弟と輪になって座ると、不機嫌そうな瑠里と社長と八雲さんが強引に入って来た。 「ちょっと、貧乏人を甘い餌で釣るんじゃないよ!粒あんで般若を手なづけて気に入らないボンボン達だね」 「あ、瑠里ちゃんだったよね、生クリーム好きって聞いてケーキもあるから食べない?」 風呂敷に包まれた箱の中にはケーキが入っていて、瑠里とイナリとキセロの『食い意地張ってるチーム』は目を奪われている。
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