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栄光の陰に
フッ。遂に俺もここまで来たか。
苦節10年。いや人生はじまってずっと苦節みたいなもんだったから28年だな。
役者をはじめて10年。連続ドラマ主演が決まり、さらにさらに今日、あの人気絶大の女優、末永みかとのキスシーンがあるのだ。
「松戸さん、着きました」
運転手はさっと外に出て、後部座席のドアを開ける。
「ありがとう」
高級車の後ろに乗って、ただただ風景を流れるのを見ているだけで目的地に着く。ドアまで開けてくれるなんて。そこに俺という主役がいることで、まるで映画のような光景となる。
「キャー!」
「かっこいい!」
「素敵ー!」
「サインください!」
車から降りると、たくさんの女性が待ち構えていた。サングラスをはずし、手を振りサービスする。声援がより一層、大きくなる。
黄色い声援とはよくいったものだ。俺を輝かせてくれる素敵な声援だ。俺を照らす太陽の日差しもスポットライトのように眩しい。
みんな俺にメロメロだ。そういえば、最近「抱かれたい男No1」に選ばれたばかりだったな。みんな抱かれたがっているってことか。みんなを抱いてやりたいぐらいだぜ。
だが今日は、末永みかが待っている。このキスシーンをきっかけに交際がはじまったりして。思わず笑みがこぼれる。おっと危ない危ない。表情が崩れる所だった。どんな時も油断大敵だ。
黄色い声援を背中に浴びながらスタジオの中へと入った。
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