第1章

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気が付くと私は1人電車に乗っていた。 何時電車に乗ったのだろう? 同級会で久しぶりに会った友人達に、誕生日を祝ってもらっていた後の記憶が途切れている。 電車は1両編成、乗客は私1人。 窓の外に目を向ける。 見覚えのない丘陵地が広がっていた。 電車がスピードを落としているのが身体に伝わる振動で分かる。 進行方向に目をくれると、駅のホームが徐々に近づいて来るのが見えた。 静かに電車が止まる。 ホームに降り看板に書かれた駅名を読む。 駅名は誕生日、進行方向の次の駅名は未来、通り過ぎて来た前の駅名は過去。 此から向かう進行方向ホームの先には、真っ暗で中を見る事が出来ないトンネルの入り口が見える。 振り返って通り過ぎて来た線路の先を見た。 ホームの先端直ぐ傍に、誕生日を祝って貰っている私がいる。 その先には初孫を抱いている笑顔の私がおり、そのもっと先には、可愛がってくれた叔父の死に泣き崩れている私がいた。 去年の誕生日から今日までの事を思い起こしていた私の耳に、発車を知らせるベルの音が響く。 私が乗り込むとドアが閉まり、電車は次の駅、来年の誕生日に向けて静かに走り出した。
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