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ごめんなさい、と。
たった一言、それだけでよかったのに。
四十歳になった高山佑志は、高校の同窓会への招待状を読み、当時の自分を思い出して苦笑した。
その時のことなど今まですっかり忘れていたのに、唐突に記憶がよみがえったのだ。
「あの人は、元気かな」
瞼の裏で、思い出の女の子が微笑んだ。
約半年後、佑志は東京にあるとあるホテルの宴会場にいた。
案内に従って進むと、どこか懐かしい顔の集団に気づく。
少し早足になって歩くと、ちょうどこちらを向いた男性と目が合い、彼は驚きと喜びと懐かしさのこもった目で笑い、佑志の名を呼んだ。
「高山! 高山だろ?」
その声に、周りの面々も振り向く。
瞬間、佑志の心は高校三年生に戻っていった。
「久しぶり。えっと……島田だっけ?」
「おいおい、頼りないこと言うなよ。後夜祭で暴れた仲だろう?」
「暴れたって……ちょっと歌っただけじゃないか」
「ふふふっ、高山くん、すごく上手だったから、あの後けっこう話題になったのよね」
話に混ざってきた女性を見て、佑志は照れくさそうに微笑した。
同窓会の招待状をもらった時、思い出したのはこの人のことだった。
「岩崎さん……」
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