第1章

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 そして、当時とても夢見がちだった彼は、その夢見た設定に則って断りの返事をしたのだ。  岩崎はぽかんとしていた。 「高校の時のこと、忘れちゃったこともたくさんあるけど、あの時の高山くんの返事だけはいつまでも覚えてるんだよね」 「いや、もう忘れてください」 「ふふふっ。……でも、今の高山くんはあの頃とはちょっと違うみたいね」 「そりゃあ……ね。俺ももう妻も子もいるし」 「そうなんだ。じゃあ、奥さんが夢から目覚めさせてくれたのかな?」 「あはは、違うよ。ん……実はね、二年生の時に告白してフラれたんだ。たぶん、その時じゃないかな」  佑志は今なら笑ってしまえるほろ苦い痛みを思い出す。  まだ自分の設定の中で生きていた佑志は、その設定のままにある女子に告白して、見事にフラれた。  設定のままといっても、心を偽っていたわけではなく、本当に好きだったのだ。  そしてフラれると同時に、それまで自分で鎧のようにまとっていた設定を粉々にされたのだ。 「あの時はホント、自分が何なのかわかんなくなって……。ま、おかげで今の自分があるんだけど」 「うん、わかるよ、その感覚。だって、私も同じだったから」 「……え? どういうこと?」
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