第1章

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「そういうこと!」 「え、そういうことって、何が?」 「ふふっ。ちょっと飲みすぎちゃったかな? 向こうで休んでくるね。また後でお話ししましょう」  新井は優雅に会釈すると、戸惑う佑志を置いてテラスのほうへ行ってしまった。  ごめんなさい。  新井は背中で佑志に謝った。  高校一年生の時、彼に告白した気持ちに嘘はなかった。  けれど、同時に佑志を自分の設定に勝手にあてはめ、夢を見ていたのだ。  そしてフラれて、設定ごと粉々にされた。  幼くて、愛しい思い出。  お酒からウーロン茶に変えた佑志の記憶は、過去と現在を行き来していた。  自分には秘められた何かがあると思い込み、その妄想を自らに設定していた幼稚だったあの頃。  中身のない使命を果たすのだと、空虚な決意をしていた。  今はどうだろうか。  家族と共に生きていくのが使命と言えば使命だし、結婚すると決めた時にした決意でもある。  けれど、夢を見ないわけでもなく。  もしかしたら、身の丈に合った設定の中で生きているのかもしれない。  ごめんなさい。
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