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「そういうこと!」
「え、そういうことって、何が?」
「ふふっ。ちょっと飲みすぎちゃったかな? 向こうで休んでくるね。また後でお話ししましょう」
新井は優雅に会釈すると、戸惑う佑志を置いてテラスのほうへ行ってしまった。
ごめんなさい。
新井は背中で佑志に謝った。
高校一年生の時、彼に告白した気持ちに嘘はなかった。
けれど、同時に佑志を自分の設定に勝手にあてはめ、夢を見ていたのだ。
そしてフラれて、設定ごと粉々にされた。
幼くて、愛しい思い出。
お酒からウーロン茶に変えた佑志の記憶は、過去と現在を行き来していた。
自分には秘められた何かがあると思い込み、その妄想を自らに設定していた幼稚だったあの頃。
中身のない使命を果たすのだと、空虚な決意をしていた。
今はどうだろうか。
家族と共に生きていくのが使命と言えば使命だし、結婚すると決めた時にした決意でもある。
けれど、夢を見ないわけでもなく。
もしかしたら、身の丈に合った設定の中で生きているのかもしれない。
ごめんなさい。
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