1、死者がゆく国

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 ふと気付くと、荒涼とした風景のなかに立ち尽くしていた。 「ここは?」  真波は辺りを見回してつぶやく。石ころだらけの荒野がどこまでも広がり、所々うっすらと白い靄(もや)が漂っている。 「あの世だよ」  思いがけず近いところから声がして、真波は飛び上がるほど驚いた。ふりかえると老人がひとり、白い着物姿で立っていた。 「あの世?」 「死後の世界といったほうがいいかな」 「え……あたし死んだの?」  老人は痛ましげに真波を見る。 「まだ若いのに気の毒だね」  その言葉に真波は少し驚き、自分の顔に触れた。  吸いつくようなみずみずしい感触に息を呑む。それからシミひとつない両手をまじまじと眺め、薄桃色のほっそりした手指に見入った。 「お先に失礼するよ」  老人はそう言うと、ぐんにゃりと人の輪郭をゆがめて白い靄に姿を変えた。 「本当にお気の毒だね、きれいなお嬢さん」  声とともに遠ざかっていく。
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