誕生日

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 長女が生まれたときは、義母は、出産当日に来ていた。  と言うか、陣痛の通知で直ぐ様産院に駆け付けてくれたため、夫と共に生まれたての赤黒い長女を抱いたのだった。  元気に泣く長女をあやしながら、義母は、 「頑張ったねぇ。お疲れさま」 そんな労いと共に、 「ありがとうね!」 と、私に対して満面の笑みを向けた。 『出産直後に押し掛ける』 『赤ちゃんを我が物顔で抱き上げ、嫁に「ありがとう」と言う』  雑誌で見た『苛つく姑の言動』そのままなことを目の前でしてくれるので、吹き出しそうになったのを覚えている。  ただ、私にとってそれはお祝いの言葉でしかなく、早朝にも関わらず来てくれたことも感動で、義母の明るい優しさが素直に嬉しかった。  祝福をもって迎えられた長女を幸せだと感じたし、私自身もまた心底幸せだった。  それが2年越しに、長男の出産によって疑惑の気持ちが膨らんでしまった。  何でお前にお礼を言われなあかんのや!!  この子はお前のモノちゃうで!!!  馴れない反抗に、つい、馴れない大阪弁を使いたい気分。  そんな口調で、突然湧いてきた苛立ちを誤魔化したかったのかもしれない。
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