誕生日

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 義母に連れられて、義母の兄弟の家へ結婚の報告と挨拶に伺った時も、違和感はあった。  義母の兄嫁にあたる方は、チャキチャキと喋る明朗な人物で、実家が商売をやっていると聞いて心から納得した。  話の大半は年配の方によくある自慢話だったけれど、確かにスゴいと思えたし、話し方が上手でとても楽しかった。  だからこそ、私も、義母の兄嫁が嫌な気持ちにならぬよう、丁寧に相槌を打っていたつもりだった。  のだけれど。  何度目かの私の返事の後に、妙な間が生まれてしまった。  義母とその兄嫁は目を合わせ、控え目ながらも二人が揃って小さく溜め息をついたのが、鈍感な私にも判った。  私は何を何処で間違えてしまったのか……笑顔で取り繕いながら、焦燥感で一杯だった、あの日。  長男が生まれてから、漸く、判った気がした。  あの時の話題は、自分がいかに骨身を削って旦那を立て、大事にしてきたか、というものだった。  いくつかの具体的なエピソードを聞いて、私は、「スゴいですね! 私にはとてもできませんっ」と、尊敬の眼差しで無邪気に返事してしまっていた。  つまり私は、夫を蔑ろにするなよと釘を刺した台詞に対して「そんなことできない」と答えていたのだ。  そりゃため息も吐きたくなるわと納得すると同時に、結婚前からそんなゴ指導を受けていたのかと、相当今更ながら背筋が凍る思いがした。
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