White

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「出て行けっ!二度と私の前に現れないでっ!」 目の前でマンションのドアが廊下に反響するくらいに音を立てて閉じた。 大切なギターを廊下の壁に叩きつけられそうになるのは食い止めたが、汚い大きなバッグは壁に打つかり廊下に転がった。 廊下に放り出された男はノロノロと立ち上がりギターを背負い、転がったバッグを持ち上げた。 無精髭が生えた顔で大きく背伸びをした。 その伸ばした手が天井に届きそうな体格と茶色のボサボサ髪が22歳大学4年になる赤星郁美だった。 ジーンズのポケットに刺したスマホがジリジリと鳴った。 それを手に取り画面を覗き込む。16時を知らせるアラームだった。 「やべえ、バイトだ」 郁美は重い荷物を抱えて走り出した。 梅雨が近付き蒸し暑い空気の中、ランニングにシャツ一枚羽織って、バイト先へ急いだ。
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