音楽のような風

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「雨だね」 「ああ雨だ」 社から駅までの道のりに街路樹に混じって桜の木がある、人々はオフィスワークの傍ら足を暫し止め、咲き誇ったその一本に憩いをもらう。ストップライトとネオンが夜の雨に乱反射して桜を彩る、人工物と自然物の調和が綺麗だったが、せっかくの桜もこの雨で散ってしまうだろう、それは残念に思った。 雨でこれ以上、花見は出来ないものの、デートを断る理由にはならない。 「花を見ながら飲めるレストランを予約しておいたんだ、ちょっと早いけど行こうか」 最初は会社の仕事で一緒になった後、飲みに行ったり、ちょっと出掛けたりと、二人の時間がだんだん多くなっていった。 出会って三年になる、交際はいつの間にか始まっていた。 お互いにあまり干渉はしない、何を考えているのか分からない所もあるけど、個を重んじているのか、私も彼の事、尊敬している、真面目なのだ仕事も生活も私に対しても。 付き合いが浅いせいとは言えないが、二人一緒の思い出も別段変わったものが無い、記念日とかイベントもこれと言って無かったり、まあそれは自分の無頓着な性格のせいでもある。
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