音楽のような風

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私のどこが好きかと、訊いた事は無い。 はっきり言って価値観も随分と違うと思う、けど、居心地は悪くなかった、お互いに、淡々と付き合っていても、やっぱりちゃんと恋人同士だったんだ。 話さなくては、祐介に今後の事を。 雨滴る窓ガラスの外、艶やかに映える桜並木を見下ろす。 「ちょっとしたものだろこの店。これなら充分花見にもなるし」 嬉しそうに祐介が言った。 こんな立派なホテルのレストランだなんて先に言ってくれていれば、もう少し着てくる物も考えたのに。 ごちゃごちゃしたいつもの居酒屋の方が落ち着く、なんて考えていた、広々とした店内に大きなテーブル、祐介との距離が少し遠い。ダウンライトの照明、やけに静かなウエイター、これなら大声を上げなくても会話できるだろう。値段の事が多少気にはなるが、大人しく落ち着いてお酒を楽しむ場所なのだ、こんなのもたまには良いと思った、でも。 さっさと切り出せばいい。 何を私は戸惑うのか。 「あ、あのさ」 「何?桜の写真でも撮る?良いよ大丈夫でしょ、最近料理やスイーツの写真撮る人多いし」 「いや、いいよ、三脚持ってきて無いし、このカメラじゃ夜間撮影に向いてない」 「そう、じゃあ何?」 「ああ、えっと…」 タイミング良く、ウエイターがワインを運んで来た、事前にコース料理を頼んでいたらしい。
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