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「とまあ、これが大賞を取った経緯だけど…」
話終わると途端に、周りのお客さんの存在に気が付く、いつの間にか席が全部うまる程、店は賑わっていた、まだ早い時間とは言え土曜日。
こんな場所柄とリーズナブルな居酒屋で、深刻な話も無いと思うのだが、二人の唯一と言ってもいい共通の趣味がお酒しか無いのでしょうがない。
向かいに座る祐介が、ジョッキのビールに喉を鳴らした後、聞き足りないとでも言うように私をじっと見つめた。
「…まあ、それが切っ掛けで、写真の仕事貰えるようになったんだけど勿論、プロになったとか思って無いよ。雑誌に掲載させてもらえるのが、嬉しいから頑張ってやっているってだけ」
祐介がもどかしさに耐えかねて重い口を開いた。
「その仕事、月に何度も無いんでしょ、写真と400文字程度のエッセイ、収入だって経費込みで数万円、確かにプロとは言えないね、とてもじゃないけど会社の仕事を放ってやる事じゃないと俺は思うんだよ、いや、君が適当に仕事をしているとは言って無いよ、ただこれまで通り写真を優先的にやっていては、社の評価も悪くなる一方だし、仲間から反感をかうよ」
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