音楽のような風

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「それにさ、その仕事が終わった後、また同じような仕事があるなんて保証は無いんだぜ、いや、多分無い、写真だけで食べて行ける本当のプロなんて一握りもいないよ、めちゃくちゃシビアな世界だと思うよ」 「それは分かるよ。実際大賞受賞者ってだけの肩書きでこの一年チヤホヤされていただけだし、コンテストはまた今年ある訳で、今の仕事も次の受賞者の人に取って代わるのは想像付くよ」 つまり私には、結構な確率の高さで、今後活躍の場も無ければ写真の発表の場所も無くなるのだ。 コンテストを盛り上げる、そして主催出版社の関心度を上げる、読者も喜ぶ、皆が楽しめる、何も悪い事をしていない。でも、それは実力の世界とは少し違うと思う。 それでも、凄い人は、やはり生きていけるのだろうけど。 分かっている、よく理解しているつもりだ、自分の事なんて。 「忠告ありがとう、心配しなくても、これからは会社の仕事を上手くこなすようにやっていくよ」 「…会社の仕事を優先しろって事だぜ。言っちゃ悪いが、写真の仕事に先は無い、楽しむ事はいいけど、写真を仕事と思っちゃいけない、趣味の範囲で一生懸命やれ」 「大丈夫、分かっている。どうせ写真なんて自己満足の趣味、また元通りの日常になるだろうから」
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