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三沢の様子がおかしいと気が付いてから、秋津なりに悩んではいたのだ。水泳以外のことに頭を使うのは初めてだった。自分以外の人間に、これほど心を砕くのも。
もしかして、気持ちよかったのは自分だけだったのではないか? それとも、先生は俺の身体だけに興味があったのか? いや、実際やってみたらたいしたこと無かった、なんてことも……。
何とも自虐的でいちいち心を抉るような想像だが、秋津にはどうしてもマイナスな考えしか浮かばなかったのだ。
好きと言ってくれたのは、気の迷いだっあのかもしれないと、半ば諦めかけていた。
「……秋津先輩? あの、どうかしました?」
秋津からは返事はなかった。まるで試合前のような集中力で、周りを遮断している。
「……こうしてはいられない」
もし、まだ望みがあるのなら。全力で勝ち取るまでだ。三沢はあの水着を褒めてくれた。それまで学校で履いたことはなかったが、尻の割れ目がギリギリ見えている、際どいビキニである。
いつもの水着よりも、鍛え上げた筋肉が目立つのではないかと思ってのことだが、あの時三沢が大層褒めてくれた。確か、水着に頬ずりまでしていた気がする。
今度、あれを着用して三沢に声をかけてみよう。喜んでくれるだろうか? 彼の笑顔が見たい。
秋津は熱い眼差しで、三沢を見つめ続けた。
その後、恋愛初心者秋津が巻き起こした恋物語は、また別のお話――。
おわる。
………からの、つづく?
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