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「なに、秋津お前水泳部に残んの? つか、お前さぁ……あれ気持ち悪く無いわけ? ……は? うっわー、引くわぁ……マジで」
かつての仲間達は口々に秋津を責め立てた。いや、呆れていた部員が大半だったかもしれない。彼らにもまた、ひとり水泳部に残る選択をした秋津の気持ちは、到底理解出来なかった。
互いに理解出来ぬまま、彼らは違う道を選んだ。だが秋津にはそれを恨むつもりは全くない。ただ、水泳部の今後の存続だけが気掛かりで、今も彼を苦しめ続けていた。
「……明日の部活動紹介で頑張れば、あるいは……」
陽炎と砂埃が立ち上るグラウンドで、彼は新たな決意を固めた。もう、自分が頑張るしかないのだ。何とか部員を獲得しなくては、愛する水泳部が消えてしまう。
大きく深い深呼吸をすると、秋津は再び走り始めた。ひとりで出来ることなど限られている。それならば、それを全力でやりきるのみだ。
普段は冷静で物静かな性格をしているこの男は、水泳が絡むと途端に暑苦しい程の情熱を発揮する。
彼のクラスメイトであり気の良い友人達は、この水泳バカの親友が何か大きな間違いを犯すのではないかと、ハラハラと秋津を見守っていた。
無論、どこか鈍感なところのある秋津がそれに気付くことはないだろう。
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