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「ねーねー、平間君どう思う? 史君大丈夫かなぁ……。なんか僕、すごく嫌な予感がするんだけど」
「んー? なんの話……?」
「だっかーらー! 部活動紹介の話だよ! 史君が張り切りすぎて、暴走するんじゃないか、って堀内君が今言ってたでしょ!」
「ね、堀内君っ」と可愛らしい笑顔で同意を求められた堀内は、頬を赤らめながら小さく頷いた。
「……秋津は手負いの獣ような貌をしている」
「ふーん? そなの? あー、俺もうお家帰りたい……」
「ダメだよ、今日は必ず来いってさっき部長に言われてたじゃん!」
ぐたりと机に突っ伏した平間の目の前で、ぴょんぴょんと飛び跳ねる落ち着きのない少年は、高校生とは思えないほど愛らしい容貌をしている。他の同級生達に比べると声も少し高めで、一部の生徒には熱狂的な人気があるらしいと噂されていた。
「えー。めんどくさー。ってかさー、奈々ちゃんが水泳部入ってやればいいんじゃん?」
奈々と呼ばれた少年は、この世の終わりのような顔をして項垂れる。
「ダメだよ、僕カナヅチだもん」
心底悔しそうに歯噛みする少年の肩に、堀内がそっと手を置いた。
「誰しも不得意なことはあるものだ」
「そーだよね? 仕方ないよね? 堀内君にも苦手なこと、ある? 僕はどうしても泳げないから、史君が心配してさ、お前は水泳部には入るなって言うんだよ」
見方によってはあざといとも取れる笑顔を浮かべ、高野 奈々は首を傾げて堀内を見つめた。
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