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開け放たれた窓から強い風が吹き込んで、三人は咄嗟に目を瞑った。
「んー風強いなぁ。なんか埃っぽいし、やっぱお家帰りたい」
「……春の嵐というやつだな」
「え? 嵐? なにそれ避難しなくていいの? 台風みたいな感じ? あっ、史君は大丈夫かな」
慌ててグラウンドを確認する奈々に、堀内はそっと声をかけた。
「奈々君、このくらいの風なら大丈夫だ。台風並みの暴風には気を付けるべきだが」
春の嵐とはメイストリームと言って……と堀内の生真面目な解説が始まり、平間は欠伸をしながら頬を机に密着させ、身体から力を抜いた。
奈々は聞いている振りをしているものの、視線はグラウンドを走る秋津に釘付けだ。そんな二人の様子に気付くことなく、堀内は淡々と説明を続けていく。
これがいつもの彼らの日常である。この三人に秋津をプラスした四人でつるむ事が多いのは、どこかしら気が合う所為、だろうか。
性格も趣味もてんでバラバラではあるけれど、いつの間にか出来上がった友情は、四人にとって居心地の良いものだった。
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