0人が本棚に入れています
本棚に追加
「私は、旅に出ます
探さないでください
本当に、ごめんなさい
三日月よし子」
"今号に掲載予定だった『ミルキーウェイを探して』の最終回は、作者都合により休載いたします。"
チカは、何度も何度も、同じページを読み返した。
けれど、いくら繰り返し読んだって、内容が変わるはずもない。
ただただ、書いてある事実に絶望するだけだ。
年に4回発行される、文芸誌『よぞら』。
有名な看板作家がいるわけでもないし、発行部数だってきっと少ないはずだ。
チカも毎回、隣町の大型書店に予約して取り寄せてもらっているほどである。
チカは、『よぞら』で小説を書いている、三日月よし子の大ファンだ。
周りの友達なんかは知らないと言うけれど、三日月先生の小説を読んだことがないなんて、本当にもったいないと思う。
だけど、もし三日月先生が有名になったら、それはそれで複雑な気持ちになりそうだ。
自分は、三日月先生の素晴らしさを知っている数少ない一人だと思うと、チカは誇らしかった。
今日は、『よぞら』春号の発売日だった。
最初のコメントを投稿しよう!