知っているのは星空だけ

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「私は、旅に出ます 探さないでください 本当に、ごめんなさい 三日月よし子」 "今号に掲載予定だった『ミルキーウェイを探して』の最終回は、作者都合により休載いたします。" チカは、何度も何度も、同じページを読み返した。 けれど、いくら繰り返し読んだって、内容が変わるはずもない。 ただただ、書いてある事実に絶望するだけだ。 年に4回発行される、文芸誌『よぞら』。 有名な看板作家がいるわけでもないし、発行部数だってきっと少ないはずだ。 チカも毎回、隣町の大型書店に予約して取り寄せてもらっているほどである。 チカは、『よぞら』で小説を書いている、三日月よし子の大ファンだ。 周りの友達なんかは知らないと言うけれど、三日月先生の小説を読んだことがないなんて、本当にもったいないと思う。 だけど、もし三日月先生が有名になったら、それはそれで複雑な気持ちになりそうだ。 自分は、三日月先生の素晴らしさを知っている数少ない一人だと思うと、チカは誇らしかった。 今日は、『よぞら』春号の発売日だった。
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