0人が本棚に入れています
本棚に追加
「えっ……どういうことですか?」
チカが尋ねると、女性は思い切ったように言葉を続けた。
「先生は、物語が一気に見えると言ってましたよね」
「はい」
「もしかしたら……見えた結末が、私たちが考える結末とは違っていたんじゃないでしょうか」
「……ハッピーエンドではない結末が見えてしまっていた、ということですか?」
「そうです! きっと、そんな結末が見えてしまって、先生は悩んだ……」
「見えた結末通りに書くか、ハッピーエンドに変えてしまうか……」
「本当は、美沙希と隼斗に幸せになって欲しい……けど、見えてしまったものを変えることも、先生にはできなかったんじゃないか、と思うんです」
「どんな結末が見えたんでしょうね……」
「あなたも言ってましたけど……隼斗はバイクに乗ります。空港に向かう途中で、事故にあったり……飛行機が……」
それっきり、女性は黙ってしまう。
けれどその考えは、最終回を書けずに旅に出た、なんて言われるよりずっと真実に近いような気がした。
最初のコメントを投稿しよう!