プロローグ

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僕は、いつも部屋の天井を見ていた 昔から体が硬直していて、指一つ動かすことが出来なかった 毎日母さんに世話をしてもらいながら生き長らえている この体のせいで友達のひとりも居ないし、会話もすることも無かった 母さんと父さんは僕が寝ている時間帯にいつも悲しんでいる そんな声は、僕も少し聞こえていた 僕が悪いのに。僕がこの体だから、二人は悲しむ 「こんな体…理不尽だよなぁ…」 その呟きは何も変わらない いつもの何も変わらない日常 外に出ないのが日常 天井をずっと見るのが日常 窓の外を見る日常 母さんと父さんの顔はだんだん暗くなっていった 僕の体が成長していく事に嫌悪感を持っているようだった 僕自身も嫌だった。動かすことも出来ないのに成長なんてしたくない そして、僕が15歳になった時の事だった いつもと違って母さんも父さんも顔が明るかった 僕の誕生日を祝ってくれているのかと思い、僕は頑張って笑顔を作った 誕生日の日は楽しかった 実際、楽しかった そして深夜に母さんは僕の部屋に入ってきた 母さんは静かに僕の近くまで歩いてくる そして、母さんは僕の体の上に座ってきた 「母さん…?」 素朴な疑問だった なぜ上に乗ってくるのか。僕には分からない 「ごめんね…直樹…あなたをこんな体に産まさせてしまって…」 母さんは暗い顔でそんなことを言ってくる 「仕方ないよ…僕は運が悪かっただけなんだから」 「直樹…あなたはやっぱり…優しいわね」 そう言うと胸に少し暖かさを感じた その後に強烈な痛みがすぐ湧き上がってきた 「が…母さん…?痛いよ」 「ごめんね…すぐにあなたの事を追いかけるから」 その言葉で何が起こったのかすぐ理解した 僕は、もうすぐ死ぬ 悲しませてしまった。だめだ。何か言わないと 「ご……ごめん…ね……母さん…」 僕の意識はここで無くなっていた こんな人生で終わりか 何もせずに、大切な家族を悲しませるだけだった 無意味な時間を過ごさせてしまったのかもしれない きっとそうなのだろう。僕が悪いのか きっとそうなのだろう。母さんが悪いのか きっとそうなのだろうか。世界を恨むべきなのか きっとそうだろう。僕は世界を恨む そうだ。僕はちゃんとした…体が欲しかった
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