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内容は今から飲み会をやるとのことだった。場所はここからそれほど遠くはなかったが、気が乗らなかった。いつものことだ、みんなが楽しめるように組んだからと言って、自分たちだけ散々楽しんでそれ以外は置いてけぼりだ。
僕が利用する価値もない。歩き出そうとスマホをポケットにしまおうとしたとき、再びスマホが震えた。
画面には、着信・砂川とあった。
僕はこういうとき、あえて電話に出る。おそらく、それが一番一般的で大学生らしい行動だろう。
確かに電話に出ない方が僕にとって利益的である。でも、それは自分を自分で殺してしまうことにも繋がる。
僕だって、自らつまらない道に進もうなんて毛頭ない。できるのなら、茨の道をくぐって達成感を味わいたいと思っている。
「もしもし」
僕は落ち着いた口調で言った。
「米田、どうせライン見ないだろうから電話した。今から、飲み会来るだろ?」
どうやら、僕はグループラインも見ない間抜けな人間だと思われているらしい。だけど、それはそれでいいとも思う。だって、それは裏切れる機会が生まれるのだから。
普段、大人しい奴が実は相当なおしゃべりのように、案外、人はちゃんと他人を見ていない。ある一部を知っただけで、その人のすべてを知ったかのように話すやつはこの世の中にごまんといる。
「ああ、じゃあ今からそっちに行くわ」
通話の向こう側はもう宴会が始まっているのだろう。喧騒が砂川の了承した声を包み込んだ。
僕は今来た道を引き返し、ゼミの飲み会の会場へと向かった。
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