音の中の人形たち

第1章

　家庭用ロボット。その性能は著しい進歩を見せている。特に人気があるのは、子供の相手をするロボットだ。兄弟のいない家庭では、まず間違いなく購入されているはずだった。一人っ子が寂しがらないように。

　住人たちは、そのロボットの性能向上に一役買っているのだ。彼らは脳への直接的な指示によって立ち上がったり座ったり、あるいは歩きと走りを交互に繰り返したりする。また、人形や食器のような壊れやすい物を優しく扱う作業をしてみせる。人間の滑らかな関節の働きや柔らかい動き、ソフトなタッチ感を、脳からの発せられた運動神経への命令伝達との絡みで研究し、ロボット技術の向上に役立てるのが目的だった。

　もっとも、今ではそれらの技術はかなりのレベルに達している。

　ビジュアルパターン認識により家族の一人一人を見分けられ、それぞれに応じた対応ができる。また、高性能カメラと距離センサーにより、子供に緊急事態が発生してもいち早く対応できるまでになった。