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だが、優秀なロボットでも人間には到底及ばない部分がある。相手の感情を理解することだ。特に、子供の場合、すべてを声で知らせてくれるとは限らない。意思や感情を表情にしか出さないこともあるのだ。人間ならその表情を読みとって、然るべき対応ができるのだが、ロボットではそうはいかない。
その研究が急ピッチでなされており、自らの感情を持たない住人に、研究材料としての期待が寄せられていた。
ベルが鳴った。プログラムのスタートだ。部屋の四方のドアが開き、十数人もの男女が入ってきた。相変わらずの白装束だ。それぞれが所定の位置につき、指示を待つ。
すべてのものに無関心な彼らに、私は親近感を持った。間もなく私も彼らの仲間入りをするのだ。
だが、その反面、私はなぜかしら重い空気を感じていた。それは、上から監視している時には気がつかなかったものだった。違和感、あるいは居心地の悪さ。それは、いったい――
私は思わず声を上げそうになった。重い空気は、目の前にいる住人から発せられていたのだ。感情のないはずの住人から。
プログラムがスタートした。指示を載せた音楽が送信される。住人が一斉に動いた。それぞれの役割を遂行するために。
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