第1章

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「でも、美味しい肉って言い方は、正確じゃないなあ。正しくは、ヴァージンなら食べられるってこと」カオルが真面目な表情であたしを見る。「あなた、もちろんヴァージンでしょ?」  あたしの喉が、グビと鳴った。ちょっぴり赤面したかもしれない、カオルから視線を外しながら、うんとうなずく。 「オッケ。それなら何の問題もないね。頭から足先まで、まるごと黒ちゃんの糧になるわ」カオルはVサインを掲げながら悪戯っぽく笑った。  あたしも笑いを返したけれど、恥ずかしさの抜けていない顔ではうまく笑えなかったかもしれない。 「あたしの家族、見たい?」カオルが笑いを引っ込めて真面目な顔になる。「ここからそんなに遠くないところにいるの」  あたしが見たいと答えると、カオルはまた蜘蛛の巣の上に葉っぱを並べながら、木の枝のところまで行った。振り返り、手招きする。  あたしはうなずくと弥次郎兵衛のような格好で、葉っぱの上を渡って行った。 「しばらく黒ちゃんは帰ってこないと思うから、今がチャンスよ」カオルは木の枝をポンと叩いた。「この木を伝っていけばたどり着くわ」  カオルとあたしは木の枝を伝い、木から木へと移動しながら落ちないように慎重に進んだ。やがて特別大きな木に出くわした。
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