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「ここで行き止まり」カオルがあたしを制して言う。「でもほら、見えるでしょ。向こうに四角い箱があるの、わかる?」
カオルが示したところ──巨大な木の根元には、たしかに箱のようなものがあった。よく見ると、それはたくさんの木の枝を蜘蛛の糸でつなぎ合わせて作った檻だった。格子の間から人が見える。大人や子供。全部で三人か。
「あたしの家族よ」カオルが言う。「お父さんとお母さん。それにお兄ちゃん」
「なんで檻の中なんかに?」
「あたしたちは飼われているんだよ。巨大な蜘蛛たちにね」カオルは両手を広げて蜘蛛の大きさを強調する。「で、子供が三人になったら、一人、餌になるの」
「三人って」あたしは顔を突き出すようにして檻の中を見つめる。「お兄さんとカオル、まだ二人じゃない?」
「ここよ、ここ」カオルが自分のお腹をなでた。
あ、と声を上げ、あたしはもう一度檻を見る。うん、たしかにお母さんのお腹が大きくせり出している。
「お母さんのお腹にもう一人いるの。たぶん、妹よ」カオルがうれしそうに頭を揺らした。「まだちょっと早いんだけどね、餌が余っているから、早めに間引きされたの」
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