第1章

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「そうなんだ。でも、残された家族はどうなるの?」あたしは檻とカオルを交互に見ながらたずねた。 「パパは、間もなく栄養を吸われると思う。たぶん、お兄ちゃんもそう。お兄ちゃん、まだ若いけど美味しくなさそうだから、吸われて終わり」カオルが両手のこぶしを頭上に掲げ、パッと開いた。「ママは赤ちゃんが生まれたら餌になると思う。赤ちゃんは村に下ろされて、他の人が面倒を見ることになっているの」  そうなんだ、とあたしはうなずく。 「でも、わかんないなあ」カオルが手のひらを頬に当てて考え込む。「餌になる人間、余っているからなあ。もしかしたら生まれる前に、ママは餌にされちゃうかも。ま、蜘蛛次第ってところね」  カオルが手近な木の枝を折って、檻に向かって投げた。枝はブーメランのように回転しながら飛んでいき、檻の前に落ちた。カオルのお父さんがそれに気づいてこっちを見た。お母さんに合図しながら、こっちに向かって手を振る。続いてお母さんも手を振った。 「お父さんとお母さん、あたしが会いに来たのでうれしそう」カオルが手を振り返しながら微笑んだ。  カオルの両親は懸命に手を振っていた。それを見ていたあたしは、違和感を覚えた。
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