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うれしそうな顔っていうのは、あんなふうな顔だったっけ? 目が唇が顔の輪郭が……なんか恐いような。
カオルの両親が、檻の格子に手をかけて動かし始めた。
何をしているんだろう。破ろうとしているようにも見えるんだけれど。
お兄さんは、檻の反対側に行って寝転んだ。家族の交流には無関心らしい。
「あはは。お父さんとお母さん、あたしに会えたものだから興奮しているわ」カオルはさらに強く手を振った。
あたしはなんだか釈然としなかったけれど、置いてきぼりをくったような気になったので、カオルと並んで手を振った。
「そろそろ、ここを離れたほうがいいわ」カオルが手を振るのをやめてあたしを見る。「黒ちゃん以外の蜘蛛に見つかったら大変。襲われるわ。ここは立ち入り禁止区域なの。ここに入った人間は、蜘蛛同士の協定の対象外になっちゃうのよ。だから、自由に襲っていいの。要するに、食べられちゃうってわけ」
カオルは最後にもう一度檻に向かって大きく手を振ると、あたしを促して引き返した。
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