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突然の声に、あたしは身を固くした。バランスを崩して、危うく倒れそうになる。声は背中側から聞こえたので、一呼吸置いたあと、あたしは振り向いた。
蜘蛛の巣の反対側で、ショートカットの女の子があたしを見ていた。あたしと同じ──中学一年生くらいに見える女の子は、やっぱりあたしと同じく木の葉の布団の上に座っていた。
あたしは蜘蛛の巣をぐるりと見渡した。もしかしたら他にも誰かいるんじゃないかと思ったからだ。でも、残念ながら、ううん、残念かどうかはわからないけれど、この蜘蛛の巣を占領しているのは、あたしとショートカットの女の子の二人だけだった。
「ねえ」女の子が両手を口に当てて作ったメガホンから声を出した。「そっちへ行っていい?」
あたしはこくんとうなずいてから、木の葉の上に座った。スカートの裾を整えてから、付け足しのように小さな声で「いいよ」と言った。
女の子は大きな木の葉──頭くらいの大きさの葉を選んでかき集め、きれいに重ねた。たくさんの木の葉を抱え、それを一枚ずつ前に置きながら、あたしのほうへ進んできた。
ああなるほど、ああすれば蜘蛛の糸にくっつかずに歩けるわけか。あたしは木の葉の道を作り続ける女の子に感心しながら微笑んだ。
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