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風呂付の部屋があるはずもなく、早々に諦めて第三城壁内で探そうとしたのだが、それでは遠いとジルに反対され(いつでも呼び出せる距離に住めと無茶ぶりをされた)、とん挫している。
ジルは浄化があるのだから、風呂は必要ないと言い張るが、そこは妥協したくない。
浄化と風呂はまったくの別物である。
かといって風呂のために一軒家を改築して住むのも無駄である。
俺は料理をする気がないので、寝室と風呂と研究室があればいいのだ。
時間が過ぎ、上の学園を卒業してからも部屋が決まらない状態でいたとき、実家から手紙が届いた。
伯爵家の人間がギルドに勤めるなど恥である。追放されたくなければ早々に戻れ。騎士団の魔術士隊へ入れてやる。
要約した内容がこれである。
魔術士隊なんてあったかなと疑問に思いつつ、戻らない覚悟を決めた。
貴族としてはもう本当に駄目なのだと思う。
だけど、俺はどうあっても貴族にはなれなかったのだ。
17年、キーマライト家の一員として生きてきても、俺はキーマライト家の人間じゃなかった。
育ててもらった恩義、なんてものも感じなかった。
むしろ勇者時代の慰謝料にしては安すぎる人生だって、そんなふうにしか思えなかったのだ。
最低な奴だと思う。だけど、結局はその感情が捨てられなかった。
俺の身体はこの世界で生まれたのに、俺の魂は違う世界で生まれたものなんだ。
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