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父は鷹揚に頷き、俺を床へ下ろした。
「我が家の次男、クリストフだ」
父に視線で促され、神官であろうその人物を見上げる。
「クリストフ・キーマライトです。本日はよろしくお願いします」
ゆっくりと、確かめるように話す。
普通に話そうとすると、舌がもつれるので仕方が無い。スローペースな子供だと思われるだろうな。
「はい、よろしくお願いします。では、こちらへおいでください」
どうやらここから父は一緒に来ないらしい。
ゆっくり歩く俺の背に、心配そうな父の視線がついてくる。
いつ倒れるのかわからないのだ。それは心配だろう。
礼拝堂らしき場所に父を残し、奥の部屋へ神官の誘導で入る。
四方の白い壁は上部に細長い穴が開いており、そこから太陽光と風が入り込んでいる。
床は土が剥き出しで、入って右手には水の入った桶が、左手には松明が置かれていた。
ああ、なるほど。祝福とは精霊にしてもらうという体裁なのか。
この部屋を見回し、今いる世界は勇者時代にいた世界なんだと思い知らされた。
勇者の時は全属性の精霊に祝福されたっけと感慨深く思い、今回はいっそ全属性から祝福をもらえなければいいなどと願ってしまう。
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