蒼銀

本気出す

　馴染もうと思っても、やっぱり無理だった。
　いつか感じた価値観の違いも、当然のことだと思う。

　新魔術で手に入れた金で、ギルドから徒歩15分くらいの、城壁に近い土地を買った。
　崩れかけた小さな家がある土地で、宿にするには広さがなく、店にするには場所が悪い。
　周囲には似たような大きさの家があり、中級以上の冒険者がチームや夫婦で借りたり買ったりしているそうだ。
　スラムが近いので、一般人には治安が悪いのだろう。

　整備されていない道路から、屋根が落ち壁が半分崩れている家を眺める。
　建物の撤去があるので、王都と考えればかなり安かった。
　まあジルの口利きが効果的だったのだが。

　これで俺も家持ちだ、なんて思いながら、体内へしまうイメージで封印していた魔力箱を、一つ壊した。

　不可視の遮断結界を作り出し、廃屋を分解して消す。
　更地になったら、あとはもう集中すればいいだけだ。

　持ってきていた木の苗を植え、大木へ成長させて切り倒す。それを材木へと加工処理し積んでおく。
　地下を掘り、壁を硬化してから材木を張り付ける。
　地下は二部屋作り、地上は一階建てだが三分の二は地下に埋まっている状態にした。