覚書

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「目が覚めて、お腹が減りました」 「ベルを鳴らしてくだされば!すぐにお持ちいたしますので、お部屋に戻りましょう」  短い冒険だった。  サンドイッチを食べ、ベッドに押し込まれた俺だが目は冴えている。  祝福の本でも読むかと、人の気配に気をつけながらのっそりと身を起こす。  本はベッドサイドのテーブルに、水差しとともに置かれている。 「灯よ」  指先に魔力を滲ませ、前世の知識を元に魔法を試してみる。  ぽわんと光の球が指先から現れた。 「おー、出来た」  気分良く闇の祝福から読むことにした。  調子に乗っていたら、途中で強制シャットダウンか魔力切れかで意識が飛んでいた。  また家族との食事をスルーしてしまったので、今後は気をつけたいと思う。  三日ほどかけて、こそこそと二冊の本を読み終えた。  闇の祝福は、暗闇に恐怖を感じ難く、植物の祝福は植物がそばにあると落ち着く……うん、無駄知識だったな。  これなら勇者の歴史か国の歴史の本を買ってもらえば良かった。  俺がいた時代はずいぶん昔のようだから、最近の魔道具などの便利グッズ一覧とかが欲しい。  俺の活動範囲には、魔道具が見当たらないんだよな。     
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