あやふやな記憶

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 頭の中ではこうしてしっかり思考できているのだが、深く考えたりしているとぶつりと意識が途絶えてしまうのだ。  周囲の大人としては、病弱な子供だと感じ過保護にもなるだろう。  前世で産まれた家は、中流の一般的な家庭だった。  両親がいて、長男だった俺を大事に育ててくれたがここまで過保護ではなかったはずだ。  妹が産まれてからは、けっこう蔑ろにされていたような気がする。  まあ俺が外で遊びまくっていたせいなのだろうが。  それにしても、環境が違う。  召喚とは違い、この世界に産まれたのだから俺はこの世界の住人だ。  勇者として与えられていた部屋はそれなりに良かったし(ほぼ帰らず討伐に行かされていたが)、世話をするメイド(監視だったが)もいた。  そして今も部屋がある。  寝室は広くて明るく清潔で、カーテンやベッドに備えられた天蓋は白く、壁紙はクリーム色。絨毯はふかふかで、いきなり倒れてもそんなに痛くない。  隣室は角の丸いテーブルと玩具や絵本が置かれていて、寝室と繋がっておりそこも俺の部屋だ。  廊下も長く、絨毯が敷き詰められていてまるで貴族の家のようだ。  まるでではなく、貴族の家なのだろう。  中世ヨーロッパ、もしくは召喚された世界のようだ。     
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