あやふやな記憶

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 俺じゃなきゃ嫌われていると思って、敬遠されていたんじゃなかろうか。  3歳児に愚痴る6歳児。メイドを下げているあたりが小賢しいと言うべきか。 「姉様?」  小首を傾げ、ゆっくりとした言葉を紡ぐ俺の方が小賢しいのだろうか。 「もういいわ!ゆっくり休むのよ!あなたが倒れるとみんなが迷惑なんですからねっ」  ツンデレなのかもしれない、なんて思いながらも、赤い顔を隠すように部屋から出ていく姉を見送った。  姉は俺を構いに来るが、5歳年上の兄はあまりやって来ない。  8歳児の兄はどうも子供が苦手らしい。  体調が良く家族の食事時間に起きている時に食堂で会うのだが、視線を合わせようとしない。  俺がパンをちぎった時、勢いが良かったのかパンが飛んだ事があった。  ギャグみたいに飛んだパンが兄のスープに落ち、これはやってしまったと兄の様子を伺った。  兄はしばし固まっていたが、ちらりと俺を見て深いため息を吐き皿を下げさせていた。 「兄様、ごめんなさい」  しょんぼりと眉を下げ謝る俺に、兄はモゴモゴと別にいいとか気をつけろとか言い、その後あいつのパンは切って出せと給しのメイドへ言いつけていた。  ん?俺の事が嫌いってわけじゃないよな。     
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