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祝福
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起きたら馬車の中だった。
父の膝に座り、揺られている現在。初めての外出は知らない間に始まっていた。
自分の住んでいる屋敷を外から見てみたかったのだが……帰りに見れるだろうか。
馬車はサスペンションが効いているのか道が整備されているのか、揺れが少ない。
勇者時代は馬に乗っていたので、実は馬車は初体験だ。
車ほど快適ではないが、小説にありがちな尻が痛いとか酔うこともなさそうで一安心だ。
どれくらいの時間が過ぎたのか、馬車は無事教会に着いた。
貴族だから街へ入る手続きがなかったのか、そんなものはそもそもないのかわからない。
ただ周囲の建物や人口の多さに、大きな街なのだろうと思っている。
父に抱き上げられたままなので、あまり観察も出来ないまま教会の中へと入った。
白亜の建物はギリシャ神話に出てくるような解放されたスペースが続き、荘厳な扉をくぐると空気が変わった気がした。
精霊がいる聖域と呼ばれていた場所の雰囲気に似ているだろうか。
「キーマライト様、お待ちいたしておりました」
白の貫頭衣に金の糸で刺繍された布を肩からかけている、白髪の老人がにこやかに近づいてきた。
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